基本情報技術者試験など情報処理技術者試験を受験する方にとっては必須の,プロジェクトマネジメントについてシンプルにまとめています。はじめに,プロジェクトマネジメントの概要とPMBOK,プログラムマネジメントの説明をし,その後,プロジェクト統合マネジメントについては,プロジェクト憲章作成,プロジェクトマネジメント計画書作成,プロジェクト実行の指揮・マネジメント,プロジェクト作業の監視・コントロール,統合変更管理,プロジェクトやフェーズの終結を,プロジェクトステークホルダーマネジメントについては,ステークホルダー(利害関係者),ステークホルダー特定,ステークホルダーマネジメント計画,ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント,ステークホルダー・エンゲージメント・コントロールを,プロジェクトスコープマネジメントについては,スコープ(範囲),スコープマネジメント計画,要求事項収集,スコープ定義,WBS(作業分割構造)作成(ワークパッケージ,アクティビティ),スコープ妥当性確認,スコープコントロールを,プロジェクト資源マネジメントについては,資源マネジメント計画,プロジェクトチーム編成,プロジェクトチーム育成,プロジェクトチームマネジメントを,プロジェクトタイムマネジメントについては,スケジュールマネジメント計画,アクティビティ定義(マイルストーン),アクティビティ順序設定(アローダイアグラム(PERT図,パート図)(最早結合点時刻,最遅結合点時刻,クリティカルパス,所要期間の短縮方法(クラッシング,ファーストトラッキング)),プレシデンスダイアグラム(FS関係(終了・開始関係),FF関係(終了・終了関係),SS関係(開始・開始関係),SF関係(開始・終了関係))),アクティビティ資源見積り,アクティビティ所要時間見積り(類推見積法,係数見積法,三点見積法),スケジュール作成(クリティカルパス法),スケジュールコントロール(トレンドチャート,ガントチャート)を,プロジェクトコストマネジメントについては,コストマネジメント計画,コスト見積り(工数,ファンクションポイント法(FP法),COCOMO,プログラムステップ法,標準タスク法(標準値法)など),予算設定,コストコントロール(アーンドバリューマネジメント(EVM)(PV,EV,AC,SV,CV,SPI,CPI))を,プロジェクトリスクマネジメントについては,リスクマネジメント計画,リスク特定(ブレーンストーミング,デルファイ法),定性的リスク分析,定量的リスク分析,リスク対応計画(マイナスの影響を及ぼすリスクへの対応戦略(回避,転嫁,軽減,受容),プラスの影響を及ぼすリスクへの対応戦略(活用,共有,強化,受容)),リスクコントロールを,プロジェクト品質マネジメントについては,品質マネジメント計画,品質保証,品質コントロール(品質管理)(QC7つ道具,新QC7つ道具)を,プロジェクト調達マネジメントについては,調達マネジメント計画,調達実行,調達コントロール,調達終結を,プロジェクトコミュニケーションマネジメントについては,コミュニケーションマネジメント計画,コミュニケーション手段(プル型,プッシュ型,相互型),コミュニケーションマネジメント,コミュニケーションコントロールを説明しています。確実に点を取れる分野ですから,丁寧にしっかり取り組みましょう。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトとは,(システム開発など)ある目的を達成するために編成される一時的な組織によって行われる活動のことをいいます。
プロジェクトマネジメントとは,プロジェクトを成功に導くために行う管理活動のことをいいます。
※ プロジェクトは,定型業務とは異なり,始まりと終わりがある
※ システム開発プロジェクトでは,納期,品質,予算の基準を設定し,その基準を満たすように開発を進める
※ プロジェクトマネージャー(PM)…1つのプロジェクトの責任者
PMBOK(Project Management Body of Knowledge;プロジェクトマネジメント知識体系)
PMBOKとは,プロジェクトマネジメントに関する知識を体系化したものをいいます。
※ 10の知識エリアと5つのプロセスで定義する
※ 分野を問わない知識体系であり,世界的に広く普及している
PMBOKの知識エリア
| 統合マネジメント | 各知識エリアをとりまとめ,プロジェクト全体を管理する |
| ステークホルダーマネジメント | プロジェクトに影響のあるステークホルダーを特定し,意思決定などに関与するように働きかける |
| スコープマネジメント | プロジェクトのスコープ(範囲)と成果物,作業を明確にし管理する。WBSを作成する |
| 資源マネジメント | プロジェクトを遂行できる組織を編成し,管理する |
| タイムマネジメント | プロジェクトが決められた期間内に完了するようにスケジュールを作成し管理する。WBSを参照しスケジュールを決定する |
| コストマネジメント | プロジェクトが決められた予算内で完了するように予算を設定し管理する |
| リスクマネジメント | プロジェクトに影響を及ぼすリスクを特定・分析し,プロジェクトの進行に影響がないよう管理する |
| 品質マネジメント | プロジェクトのプロセスや成果物の品質を管理する |
| 調達マネジメント | 作業に必要な製品やサービスを購入(取得)する活動を管理する |
| コミュニケーションマネジメント | ステークホルダーに必要な情報を正確に伝える活動を行う |
PMBOKのプロセス
PMBOKでは,プロジェクトの流れを,立ち上げ,計画,実行,監視・コントロール,終結という5つのプロセスに分けて定義します。
プログラムマネジメント
プログラムマネジメントとは,プログラム(関連する複数のプロジェクト)を管理することをいいます。
※ プログラム…関連する複数のプロジェクトをまとめたもの。複数のプロジェクトを管理することで効率化が図れる場合などに,それらをまとめ,プログラムという単位にする
※ プログラムマネージャー…プログラム(関連する複数のプロジェクト)の責任者
プロジェクト統合マネジメント
プロジェクト統合マネジメントでは,各知識エリアをとりまとめ,プロジェクト全体を管理します。
プロジェクト憲章作成
プロジェクト憲章は,企画書などを基に作成します。プロジェクトの目的や目標,予算やスケジュールの概要などを記載します。
※ プロジェクト憲章…プロジェクトを公式に認める文書。ステークホルダーのニーズを満たす要求事項をまとめる
プロジェクトマネジメント計画書作成
プロジェクトマネジメント計画書は,プロジェクト憲章を基に,補助計画書などを統合して作成します。
※ 補助計画書…各知識エリアの計画プロセスで作成される計画書
プロジェクト実行の指揮・マネジメント
プロジェクト実行の指揮・マネジメントでは,計画書に沿って成果物を作成します。また,変更があるものについても対処します。
※ 知識エリアごとの補助計画書を基に実行する
プロジェクト作業の監視・コントロール
プロジェクト作業の監視・コントロールでは,各知識エリアから集めた情報を計画書と比較・確認します。また,ステークホルダーのために状況報告書を作成します。
※ 計画との差異が生じた場合は,変更要求も行う
統合変更管理
統合変更管理では,各知識エリアの変更要求をレビューし,承認されたものについては変更作業を行います。
※ プロジェクトの各構成要素などに対する変更と実施状況を記録・報告したり,要求事項への適合性を検証する活動の支援を行う(構成管理)
プロジェクトやフェーズの終結
プロジェクトやフェーズの終結では,プロジェクトが完了し目的や目標を達成したことを確認して,プロジェクトの結果報告書を作成します。
※ プロジェクトが中止した場合でも文書化する
プロジェクトステークホルダーマネジメント
プロジェクトステークホルダーマネジメントでは,プロジェクトに影響のあるステークホルダーを特定し,意思決定などに関与するように働きかけます。
※ ステークホルダー(利害関係者)…利害関係をもつ人のこと。取引先や,スポンサー,顧客,従業員など
ステークホルダー特定
ステークホルダー特定では,ステークホルダーを特定し,利害や影響度を文書にします。
※ ステークホルダーは,プロジェクト憲章などから洗い出す
※ ステークホルダー登録簿…ステークホルダーを管理するための文書。ステークホルダーの氏名などを記載する
ステークホルダーマネジメント計画
ステークホルダーマネジメント計画では,ステークホルダー登録簿を基にステークホルダーの現在の立ち位置などを分析し,ステークホルダーマネジメント計画書を作成します。
ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント
ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメントでは,計画などを基にステークホルダーとコミュニケーションをとり,ステークホルダーのニーズを満たすようにすることでプロジェクトへの関わりを強めるようにします。
※ ステークホルダーのプロジェクトへの関わりを(強すぎず弱すぎず)適切なものにする
※ エンゲージメント…結び付きという意味
※ 計画を変更する必要がある場合は,(プロジェクト統合マネジメントの統合変更管理に対して)変更要求を行う
ステークホルダー・エンゲージメント・コントロール
ステークホルダー・エンゲージメント・コントロールでは,ステークホルダーとの関係性を監視・調整します。
プロジェクトスコープマネジメント
プロジェクトスコープマネジメントでは,プロジェクトのスコープ(範囲)と成果物,作業を明確にし管理します。
※ ステークホルダーのニーズを満たすように管理する
スコープマネジメント計画
スコープマネジメント計画では,プロジェクト憲章などを基に,スコープマネジメント計画書と要求事項マネジメント計画書を作成します。
※ スコープマネジメント計画書…スコープの定義やマネジメントをどのように行うかや,WBSの作成方針を記載する
※ 要求事項マネジメント計画書…ステークホルダーのニーズをどのように収集・整理するかを記載する
要求事項収集
要求事項収集では,計画などを基に,ステークホルダーのニーズを定義し文書化します。
※ ステークホルダーのニーズを段階的に詳細化する
スコープ定義
スコープ定義では,プロジェクト憲章と要求事項収集で作成した文書を基に,プロジェクトのスコープを詳細に定義し,プロジェクトスコープ記述書を作成します。
※ プロジェクトスコープ記述書には,プロジェクトのスコープや成果物などを記載する
WBS(Work Breakdown Structure;作業分割構造)作成
WBS作成では,要求事項収集で作成した文書やプロジェクトスコープ記述書を基に,プロジェクトで作成する成果物や実行する作業を,階層的に分解し定義します。
※ WBSを作成することで,スケジュールやコストの見積りなどができる
※ ワークパッケージ…最下位レベルの要素で,アクティビティを割り当てる。スケジュールやコストの見積り,監視・コントロールの対象となる
※ アクティビティ…実際に行う作業
スコープ妥当性確認
スコープ妥当性確認では,完成した成果物をステークホルダーなどがレビューし,正式に受け入れられます。
※ プロジェクト品質マネジメントで,品質を確認された成果物が正式に受け入れられる
スコープコントロール
スコープコントロールでは,スコープと成果物の差異を確認し,必要に応じて(プロジェクト統合マネジメントの統合変更管理に対して)変更要求を行います。
プロジェクト資源マネジメント
プロジェクト資源マネジメントでは,プロジェクトを遂行できる組織を編成し,管理します。
資源マネジメント計画
資源マネジメント計画では,各要員の役割を決めて責任の範囲を定義し適切な権限を与えるなどの方針を策定して,資源マネジメント計画書を作成します。
※ 必要な要員数は,タイムマネジメントで見積もられている
プロジェクトチーム編成
プロジェクトチーム編成では,資源マネジメント計画書に沿って要員の調達を行います。
プロジェクトチーム育成
プロジェクトチーム育成では,要員のスキルを向上させ,チームワークを強化します。
※ 適切な表彰と報酬を設定する
プロジェクトチームマネジメント
プロジェクトチームマネジメントでは,チームの評価や,コミュニケーションマネジメントで作成した実績報告書からパフォーマンスを評価します。
※ コンフリクト(衝突)が生じることもある。進行に支障がある場合は,統合変更管理(プロジェクト統合マネジメント)に変更要求を出す
プロジェクトタイムマネジメント
プロジェクトタイムマネジメントでは,プロジェクトが決められた期間内に完了するようにスケジュールを作成し管理します。
※ WBSを参照しスケジュールを決定する
※ アクティビティ…実際に行う作業。WBSで割り当てられる
スケジュールマネジメント計画
スケジュールマネジメント計画では,プロジェクト憲章などを基に,スケジュールマネジメント計画書を作成します。
アクティビティ定義
アクティビティ定義では,WBSのワークパッケージをさらに分解し,アクティビティを定義します。
※ アクティビティ…実際に行う作業。WBSで割り当てられる
※ アクティビティリストを作成 ⇒ マイルストーンリストを作成 という流れ
※ マイルストーン…作業の区切りとなる時点
アクティビティ順序設定
アクティビティ順序設定では,アクティビティを行う順序関係を設定します。
アローダイアグラム(PERT図,パート図)
アローダイアグラムは,各作業の前後関係を表す図です。アローダイアグラムの記述ルールは,次のとおりです。
※ FS関係(終了・開始関係)を表すことができる
※ PERT(パート)…作業の前後関係をアローダイアグラムを使用して表す技法のことをいう
- 2つの結合点の間には,1つの作業のみを記述できる(複数の作業を同時並行する記述はできない)
- ループを作らない
たとえば,あるプロジェクトをA~Hの作業に分解したアローダイアグラムは,次のようになります。
| 作業 | 作業名と作業日数を表す | |
| 結合点 | 作業の開始と終了を表す | |
| ダミー作業 | 実体のない作業を表す。作業日数は0となる |
最早結合点時刻(ET;Earliest node Time),最遅結合点時刻(LT;Latest node Time)とクリティカルパス
最早結合点時刻とは,結合点に到着するすべての作業が終了する最も早い日のことで,最後の結合点における最早結合点時刻は,プロジェクトの最短所要日数となります。
最遅結合点時刻とは,結合点から開始する作業が遅くとも開始されなければならない日のことをいいます。
クリティカルパスとは,開始可能になったら直ちに作業を始めなければならない余裕のない作業を結んだ経路のことをいいます。
所要期間の短縮方法
クラッシング
クラッシングとは,クリティカルパス上の作業に割り当てる資源を増やして,プロジェクトの所要期間を短縮する技法のことをいいます。
※ 他の経路がクリティカルパスになった場合は,目標どおりに短縮できない
ファーストトラッキング
ファーストトラッキングとは,前の作業が完了する前に,仕様が決まっている次の作業を開始することにより,プロジェクトの所要期間を短縮する技法のことをいいます。
※ 順に行う作業を,並行して行うことにより短縮できる
※ 手戻り(やり直し)のリスクがある
プレシデンスダイアグラム
プレシデンスダイアグラムは,各作業の前後関係を表す図です。作業の順序・依存関係を細かく表すことができます。
| FS(Finish to Start)関係 (終了・開始関係) | 前の作業が終了したら,次の作業を開始できる |
| FF(Finish to Finish)関係 (終了・終了関係) | 前の作業が終了したら,次の作業も終了する |
| SS(Start to Start)関係 (開始・開始関係) | 前の作業が開始したら,次の作業も開始できる |
| SF(Start to Finish)関係 (開始・終了関係) | 前の作業が開始したら,次の作業が終了する |
※ アローダイアグラムはFS関係(終了・開始関係)のみを表すことができる
たとえば,あるプロジェクトをA~Eの作業に分解したプレシデンスダイアグラムは,次のようになります。
アクティビティ資源見積り
アクティビティ資源見積りでは,各アクティビティで必要となる(人や物などの)資源の量と種類を見積もります。
※ 人的資源を重要視することが多い
アクティビティ所要時間見積り
アクティビティ所要時間見積りでは,アクティビティ資源見積りで想定した資源を基に,アクティビティの完了に必要な期間を見積もります。
| 類推見積法 | 過去の類似したアクティビティの所要時間を参考に見積もる手法 |
| 係数見積法 | 作業ごとの基準値(過去のデータなどから統計的手法により算出した値)を基に見積もる手法 |
| 三点見積法 | 最頻値,楽観値,悲観値の3つの値を用いて見積もる手法 三点見積値=(最頻値×4+楽観値×1+悲観値×1)÷6 ※ 類推見積法や係数見積法が使用できない場合でも使用可能 |
スケジュール作成
スケジュール作成では,これまでの成果物を使用して,各アクティビティの予定開始日と予定終了日を設定し,全体のスケジュールを作成します。
| クリティカルパス法 | 開始可能になったら直ちに作業を始めなければならない余裕のない作業を結んだ経路を設定する手法 |
※ クリティカルパス法の詳細は前述
スケジュールコントロール
スケジュールコントロールでは,プロジェクトの進捗状況を監視して,計画と実績の差異を把握し調整します。
トレンドチャート
トレンドチャートは,開発費用と作業の進捗を管理するための図です。マイルストーンで予定と実績の比較を行います。
※ マイルストーン…作業の区切りとなる時点
ガントチャート
ガントチャートは,作業の進捗状況を管理するための図です。
※ 工程管理に使用される
※ 作業間の関連性は表すことができない
※ アクティビティ…実際に行う作業。WBSで割り当てられる
プロジェクトコストマネジメント
プロジェクトコストマネジメントでは,プロジェクトが決められた予算内で完了するように予算を設定し管理します。
コストマネジメント計画
コストマネジメント計画では,プロジェクト憲章などから予算やコストを確認し,コストマネジメント計画書を作成します。
コスト見積り
コスト見積りでは,実際にコストを見積もります。
工数
工数とは,作業量のことをいいます。人日や人月という単位を使用します。
例)2人の要員で5か月かかる作業の工数
工数=2(人)×5(ヶ月)=10(人月)
ファンクションポイント法(FP法)
ファンクションポイント法は,ソフトウェアの機能を入出力データや画面数などにより集計し,それぞれの複雑さによる重みづけを行い工数を見積もる手法です。
※ (利用者から見える)画面などから見積もるため,利用者は理解しやすい
COCOMO
COCOMOは,ソフトウェアの予想される規模(プログラムのステップ数(行数))を基に,工数と期間を見積もる手法です。
※ 方程式を利用して求める
ソースコードの行数(開発規模)と開発工数,開発工数と開発期間の関係は次のようになります。
プログラムステップ法
プログラムステップ法は,ソフトウェアを構成するすべてのプログラムのステップ数(行数)を基に,工数を見積もる手法です。
※ プログラム言語の種類などによりステップ数が異なるという欠点がある
例)生産性が1,000ステップ/人月の開発者が,500行のソースコードを記述する場合の開発工数
開発工数=500÷1,000=0.5(人月)
標準タスク法(標準値法)
標準タスク法は,WBSに基づいて作業単位に工数を見積もり,それを積み上げて全体の工数を見積もる手法です。
類推見積法
類推見積法は,過去の類似したアクティビティの所要時間を参考に見積もる手法です。
予算設定
予算設定では,プロジェクト全体の予算を算出します。
コストコントロール
コストコントロールでは,プロジェクトを監視し,変更を管理します。
アーンドバリューマネジメント(EVM)
アーンドバリューマネジメントは,プロジェクトの計画と実績を評価する手法です。
※ プロジェクトのコスト超過や,進捗の遅れを把握できる
次の図では,進捗に遅れがあり,予算が超過していることが把握できます。
プロジェクトリスクマネジメント
プロジェクトリスクマネジメントでは,プロジェクトに影響を及ぼすリスクを特定・分析し,プロジェクトの進行に影響がないよう管理します。
※ プラスのリスクは積極的に活用し,マイナスのリスクは予防する
リスクマネジメント計画
リスクマネジメント計画では,リスクに対する活動やリスク評価の基準を確立し,リスクマネジメント計画書にまとめます。
※ リスクの発生確率と影響度を定義する ⇒ 定性的リスク分析で使用する
リスク特定
リスク特定では,リスクを特定し文書にまとめます。
※ ブレーンストーミングや,デルファイ法などによりリスクを洗い出す
ブレーンストーミング
ブレーンストーミングは,多様なアイディアを得るための手法で,参加者が集まり他人のアイディアを批判することなく自由にアイディアを出し合います。
- 他の参加者のアイディアを否定・批判しない
- 突飛な意見も歓迎する
- 質より量を重視する
- 他の参加者のアイディアに新しいアイディアを付け加えることを歓迎する
デルファイ法
デルファイ法は,複数の専門家から個別の見解を求め,そこから得られた結果を全員に配布し再び見解を求める,という過程を繰り返し,見解をまとめる手法です。
定性的リスク分析
定性的リスク分析では,リスクの発生確率と影響度から,リスク対応の優先順位を付けます。
定量的リスク分析
定量的リスク分析では,リスクがプロジェクト全体に与える影響を定量的に分析します。
リスク対応計画
リスク対応計画では,対応策を検討します。
マイナスの影響を及ぼすリスクへの対応戦略
| 回避 | リスクそのものを取り除いたり,プロジェクトの計画を変更(スコープを縮小するなど)してリスクのマイナスの影響をなくす戦略 |
| 転嫁 | 保険をかけるなどして,リスクのマイナスの影響の一部や全部を第三者に移す戦略 |
| 軽減 | リスクの発生確率やマイナスの影響度を低減する戦略 |
| 受容 | 何もしない戦略(リスクのマイナスの影響が許容範囲内である場合や,リスクを取り除けない場合)。リスクが発生した時点で対処する |
プラスの影響を及ぼすリスクへの対応戦略
| 活用 | 好機が確実に来るように,不確実性を取り除く戦略 |
| 共有 | 好機を第三者と共有する戦略 |
| 強化 | プラスの影響を増加させたり,発生確率を高めたりする戦略 |
| 受容 | 何もしないが,好機が実現したら受け入れる戦略(対策費用が予想利益を上回っている場合など) |
リスクコントロール
リスクコントロールでは,特定したリスクの追跡や残存リスクの監視を行います。また,新たなリスクの特定を行い,その影響についてもまとめます。
※ プロジェクトに影響のあるリスクについては,変更要求で対処する
プロジェクト品質マネジメント
プロジェクト品質マネジメントでは,プロジェクトのプロセスや成果物の品質を管理します。
品質マネジメント計画
品質マネジメント計画では,品質要求事項や品質標準を定め,プロジェクトでそれを確保するために品質マネジメント計画書を作成します。
品質保証
品質保証では,品質標準と運用基準を満たすために測定結果を監査し,問題点を改善します。
品質コントロール(品質管理)
品質コントロールでは,パフォーマンスを査定して品質マネジメントにおける作業を監視し,記録します。
※ 品質改善のために,QC7つ道具や新QC七つ道具を使用する
QC7つ道具
| 管理図 | 時系列なデータの特性値折れ線グラフで表した図 ※ データのばらつきから品質不良などを把握できる |
| 特性要因図 | ある特性(結果)と要因(原因)の因果関係を,魚の骨(フィッシュボーン)のような形状で表した図 |
| ヒストグラム (度数分布図) | データを区間(階級)に分類し,各区間のデータの個数(度数)を棒グラフで表した図 ※ データのばらつきや分布を視覚的に把握できる |
| パレート図 | データを項目ごとに分類して個数(度数)の大きい順に並べた棒グラフと,その累積割合を折れ線グラフで表した図 ※ 優先的に管理する項目が把握できる |
| 散布図 | 2つの項目を縦軸と横軸とする座標に,データの特性値をプロットした図 ※ プロットした点の分布状況から項目間の相関関係を分析する |
| チェックシート | 調査や検査などの記録を行うための図 |
| 層別 | データを分類して,特性を明確にする手法 ※ ヒストグラムやパレート図など,他のツールと組み合わせて使う手法である |
新QC7つ道具
| PDPC | 情報が不足している活動や予測が困難な活動について,考えられる状況や必要な処置,結果などを予測して整理する手法 |
| 親和図法 | 収集した情報をカードに記入し,関連性によってグループ化して問題点を明らかにする手法 ※ 収集した情報をまとめるための手法 |
| 連関図法 | 複雑に絡み合った事象について,それぞれの事象間の関係を明らかにする手法 |
| 系統図法 | 目的を達成するための手段を明らかにする手法 |
| マトリックス図法 | 行と列から成る2次元の表を用いて複数の要素間の関連性を明らかにする手法 |
| マトリックスデータ解析法 | マトリックス図法から得られた結果を基に,散布図などに展開し分析する手法 ※ (新QC7つ道具で唯一)定量的な分析を行う |
| アローダイアグラム法 | アローダイアグラムにより工程を管理する手法 |
プロジェクト調達マネジメント
プロジェクト調達マネジメントでは,作業に必要な製品やサービスを購入(取得)する活動を管理します。
※ 調達が必要になったタイミングで行う
調達マネジメント計画
調達マネジメント計画では,プロジェクトマネジメント計画書などから要求事項を確認して調達品目を具体化し,外注する場合は,調達マネジメント計画書などを作成しまとめます。
調達実行
調達実行では,計画に基づいて納入業者の選定を行い契約します。
※ 入札などを行う
調達コントロール
調達コントロールでは,契約のパフォーマンスを監視し,必要に応じて変更と是正を行います。
調達終結
調達終結では,調達マネジメント計画書の内容を確認し,計画からコントロールまでをレビューし,完結します。
※ 検収に不合格の場合は,調達コントロールに戻される
プロジェクトコミュニケーションマネジメント
プロジェクトコミュニケーションマネジメントでは,ステークホルダーに必要な情報を正確に伝える活動を行います。
コミュニケーションマネジメント計画
コミュニケーションマネジメント計画では,ステークホルダーのニーズを把握してコミュニケーションの取り方を定め,コミュニケーションマネジメント計画書にまとめます。
コミュニケーション手段
| プル型 | (受信者の意思で)必要になったときにアクセスする方法 ※ 掲示板など |
| プッシュ型 | 特定の相手に向けて発信する方法 ※ 電子メールなど |
| 相互型 | 複数の参加者が,それぞれの参加者同士でやり取りする方法 ※ テレビ電話など |
コミュニケーションマネジメント
コミュニケーションマネジメントでは,計画に基づいて情報を収集し,管理します。
コミュニケーションコントロール
コミュニケーションコントロールでは,計画に基づいたコミュニケーションが適切に行われているかを評価します。
まとめ
今回は,プロジェクトマネジメントにまとめてみました。繰り返し頑張りましょう。
