法務は,基本情報技術者試験をはじめとする情報処理技術者試験で頻出となる重要分野です。知的財産権や著作権,個人情報保護法,不正アクセス禁止法,契約形態,労働関連法規など,IT業界で必要となる法律やルールを正しく理解できていますか?
- 法務=ITに関わる法律・契約・権利・ルールを体系的に理解する分野
これらは単なる暗記ではなく,「どのような場面で必要になるのか」,「どのような行為が違法となるのか」,「契約や権利にどのような違いがあるのか」を理解することが重要です。
このページでは,知的財産権,セキュリティ関連法規,労働・契約関連法規,ソフトウェア利用契約,標準化機関などについて,試験で頻出となるポイントを中心にシンプルに整理しています。
初学者の方や,法務分野を体系的に復習したい方に向けたまとめページです。
知的財産権とは
知的財産権とは,人の知的な活動によって生み出された創造物を保護する権利のことをいいます。
知的財産権の種類
産業財産権とは
産業財産権とは,アイデアや技術,デザインなどを保護する権利のことをいいます。
特許権とは
特許権とは,自然法則を利用した高度な技術(発明)を保護する権利のことをいいます。
※ 特許庁に出願し,審査に合格すると登録される
※ 保護期間は,20年
- 高度な技術(発明)を独占して使うことができる
- 高度な技術(発明)を他人に使わせ,ライセンス料を得ることができる
特許クロスライセンスとは
特許クロスライセンスとは,複数の企業が,それぞれ保有する特許を相互に利用し合う契約のことをいいます。
※ 互いの特許を利用し合うため,特許の使用料の支払いが不要になったり,大幅に相殺できたりする
実用新案権とは
実用新案権とは,自然法則を利用した技術のうち,物品の構造や形状,組合せに関する考案を保護する権利のことをいいます。
※ 特許庁に出願すると,そのまま登録される
※ 保護期間は,10年
- 比較的簡単な技術を守ることができる
意匠権とは
意匠権とは,物品の形状や模様,色などを保護する権利のことをいいます。
※ 特許庁に出願し,審査に合格すると登録される
※ 保護期間は,25年
- 物品のデザイン(見た目)を保護することができる
商標権とは
商標権とは,商品やサービスについて,他と区別するための商標(名称やロゴマーク)を保護する権利のことをいいます。
※ 特許庁に出願し,審査に合格すると登録される
※ 保護期間は,10年(更新可能)
- 同じ商標や,似た商標の無断使用を防ぐことができる ⇒ ブランドを守り,他と区別することができる
著作権とは
著作権とは,著作物を保護し,その利用や公表方法などを管理できる権利です。
※ 著作物…思想や感情を創作的に表現したもの。例)文章,音楽,絵画,写真,映像,プログラム,データベースなど
※ プログラム言語や,アルゴリズム,アイデアそのものなどは,著作物には当たらない(プログラムのソースコードは著作物として保護される)
※ 著作権は,創作した時点で自動的に発生する(出願の必要はない)
※ 企業の業務で創作した著作物の著作権は,特別な定めがない限り,その企業などの法人に帰属する
- 著作物の無断コピーや,公開,改変などを防ぐことができる
著作者人格権とは
著作者人格権とは,著作物を作った著作者の人格的な利益を保護する権利のことをいいます。
※ 権利を他人に譲渡することはできない
| 公表権 | 未発表の著作物の公表の仕方を決めることができる権利 |
| 氏名表示権 | 著作物を公表する際に,著作者の実名やペンネームなどを表示するかしないかを決めることができる権利 |
| 同一性保持権 | 著作物を勝手に改変されないようにできる権利 |
著作財産権とは
著作財産権とは,著作物を利用して得られる経済的な利益を保護する権利のことをいいます。
※ 権利を他人に譲渡したり,相続させることができる
※ 著作物の利用を他人に許可し,使用料(ライセンス料)を得ることができる
※ 原則として,作者の死後70年まで保護される
| 複製権 | 著作物を複製(コピー)する権利 例)正規に購入,あるいはレンタルした音楽CDなどを勝手にコピーすることは違反であるが,例外として,家庭で私的に利用したり学校の授業で利用する目的でコピーすることは認められている |
| 公衆送信権 | 著作物をテレビやラジオ,インターネットなどで公開する権利 例)Webページで,許可を得ていない音楽CDの曲などをダウンロードさせたり,BGMとして流すことは違反である |
| 譲渡権 | 著作物や,その複製物(コピー)を他人に譲渡する権利 |
| 貸与権 | 著作物の複製物(コピー)を貸与する権利 例)許可を得ていない音楽CDなどのレンタルを行うことは違反 |
不正競争防止法とは
不正競争防止法とは,企業同士が公正に競争できるようにする(ずるい行為を禁止する)法律をいいます。禁止行為には,次のようなものがあります。
※ 権利の登録をしなくても,不正な行為は法律によって禁止される
- 有名な商品の名称や表示(ロゴ・外観など)をまねして販売するなどして,消費者を混乱させる行為の禁止
- 原産地や品質などを偽って表示し,消費者を誤認させる行為の禁止
- 営業秘密(トレードシークレット)の不正利用の禁止
※ 営業秘密…企業が秘密として管理している,技術情報や顧客情報などのこと
- 競合他社の信用低下を目的とした虚偽の告知の禁止
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セキュリティ関連法規とは
サイバーセキュリティ基本法とは
サイバーセキュリティ基本法とは,国全体でサイバー攻撃に対応するための方針・体制を決める法律です。
※ 国や地方自治体,一般企業の役割や責任を定義している(個人を罰する法律ではない)
- 政府が,サイバーセキュリティに関する戦略を策定する
- 内閣に,サイバーセキュリティ戦略本部を設置する
- (情報通信や金融,電力,医療などの)企業に対して,自律的なセキュリティ対策の重要性を示す
不正アクセス禁止法とは
不正アクセス禁止法とは,他人のIDやパスワードを不正に使用してログインする行為(なりすまし)などを禁止する法律です。
※ IDやパスワードを不正に取得する行為や,第三者に教える行為,脆弱性を突いて侵入する行為も禁止している
ウイルス作成罪とは
ウイルス作成罪とは,コンピュータウイルスの作成・配布などを処罰する法律です。
※ ウイルス作成罪というのは,刑法に定められた不正指令電磁的記録に関する罪の通称である
※ ウイルス(プログラム)そのものが対象である(ウイルスを作成したり,メールでばらまいたりする行為も対象 ⇒ 実際に被害が発生していなくても処罰対象)
個人情報保護法とは
個人情報保護法とは,個人情報を適切に扱うためのルールを定めた法律です。
※ 個人情報…生存する個人に関する情報(氏名や,生年月日,住所,顔写真など)
※ 個人情報を事業活動に利用する事業者が対象
※ 個人情報の利用目的を本人に通知・公表する必要がある
- 顧客データなどを目的外で勝手に利用することはできない
- 情報漏えいを防止するための安全管理措置を行う必要がある
- 顧客データなどを無断で第三者に提供することはできない
特定個人情報ガイドライン(マイナンバー)とは
特定個人情報ガイドラインとは,マイナンバーを含む情報を特に厳しく管理するガイドラインです。
※ マイナンバーは,税・社会保険など法定用途だけで使用できる
労働関連・契約関連とは
IT業界での主な働き方
まずは,IT業界での主な働き方を確認しておきましょう。
| 正社員・契約社員 | 会社に直接雇用されて働く形態。一般的な会社員 ・雇用主:勤務先企業 ・指示を出す人:勤務先企業 ・給料の支払い:勤務先企業 例)社内SE,自社のエンジニア,運用担当など |
| 派遣社員 | 派遣元企業に雇用され,派遣先企業で働く形態 ・雇用主:派遣元企業 ・指示を出す人:派遣先企業 ・給料の支払い:派遣元企業 例)技術支援,ヘルプデスク,運用監視など |
| 業務委託 (外部委託) | 企業外の会社へ業務を依頼する契約形態(「人」ではなく,「仕事」を依頼する契約) ・契約の対象:業務や成果物 ・雇用関係:なし ・業務の進め方:受託側企業が管理 例)ECサイトの開発を外部企業へ依頼するなど |
派遣契約とは
派遣契約とは,派遣元企業と雇用関係にある労働者を,派遣先企業で働かせる契約のことをいいます。
※ 「○○社の労働者が,△△社で常駐して働く」というような契約。完成責任はない
業務委託(外部委託)の契約形態とは
請負契約とは
請負契約とは,請負企業(請負元)が発注元企業に対し,仕事を完成させる契約のことをいいます。請負企業は,自社の従業員に対して指揮命令を行い業務を進めます。
※ 「○○システムを作ってください」というような,完成責任のある契約。完成しない場合は,損害賠償などの問題が発生する
偽装請負とは
偽装請負とは,請負契約なのに,実態は派遣になっている状態をいいます。
※ 発注元企業が,請負労働者へ直接指示すると,労働者派遣法違反となる場合がある
準委任契約とは
準委任契約とは,業務を(継続的に)適切に行う契約のことをいいます。
※ 「○○システムの監視・運用をして下さい」というような契約。請負と同様に業務を行うが,完成責任はない
労働関連法規とは
| 労働基準法 | 労働条件の最低基準を定める,働く人を守るための法律 ・労働時間:1日8時間・週40時間 ・休日:法定休日 ・割増賃金:残業代 |
| 労働者派遣法 | 派遣労働について定めた,働く人を保護するための法律 |
| 裁量労働制 | (実際の労働時間ではなく)あらかじめ決めた時間働いたとみなす制度 ・実際:働いた時間に関係なく評価される ・みなし:あらかじめ定めた時間働いたとみなす 例)SEが自由に作業するなど |
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ソフトウェア関連契約とは
ライセンス契約とは
ライセンス契約とは,ソフトウェアの利用を許可する契約のことをいいます。
| ボリュームライセンス | 複数台のPCにライセンスを提供する方式。個別に購入するよりも安くなることが多い |
| サイトライセンス | 1つの組織や拠点全体にライセンスを提供する方式 |
| CAL | Client Access License。サーバーに接続できる利用者数(または端末数)を制限する方式(アクセス権の購入) |
| フリーウェア | 無料で利用できるソフトウェア。広告付きなど,制限付きの場合もある。ソースコードは公開されないことが多い |
| OSS | ソースコードが公開され,改変・再配布が可能なソフトウェア |
※ シュリンクラップ契約…パッケージソフトウェアの外装フィルムを開封することで契約同意とみなす方式
契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)とは
契約不適合責任とは,契約どおりの内容に適合していない場合に,契約の相手側(売主など)が負う責任のことをいいます。
※ 補修請求や,代替物請求,代金減額請求,損害賠償請求などができる
取引関連法規とは
| 民法 | 契約や損害賠償などに関する法律 |
| 商法 | 企業活動や商取引に関する法律 |
| 特定商取引法 | 悪質商法から消費者を守る法律。通信販売や訪問販売,電話勧誘などが対象。一定期間内なら契約解除(クーリングオフ)できる制度を定めている |
| 独占禁止法 | 公正な競争を守る法律。私的独占(市場を支配し,競争を排除する行為)や,カルテル(価格協定),不当廉売(異常な安売り),優越的地位濫用(下請いじめ)などが禁止されている |
| 下請法 | 下請企業を保護する法律。元請企業が,支払いの遅延や,一方的な値下げを行った場合に違法となる可能性がある |
| 製造物責任法 (PL法) | 製品の欠陥によって,人の生命・身体・財産に損害が生じた場合に,製造業者などが無過失でも責任を負う法律 例)欠陥のある家電が発火して火事になる,欠陥のある部品でけがをするなど |
標準化機関とは
| ISO | 国際標準化機構。世界共通の標準規格を作る国際機関 例)品質管理(ISO 9001),環境管理(ISO 14001)など |
| IEEE | 電気電子学会。電気・電子・情報分野の実質的な世界標準を多く作る技術者組織 例)LANの規格(Ethernet 802.3),Wi-Fi規格(802.11シリーズ)など |
| IETF | インターネット技術タスクフォース。インターネット技術の標準を策定する国際的な技術コミュニティ 例)TCP/IPやHTTPなどのインターネット基盤プロトコルの標準化(RFC)など |
| ANSI | American National Standards Institute。米国内の各業界団体の規格を米国標準として承認する民間機関 |
| NIST | 米国国立標準技術研究所。米国政府の標準・計測・セキュリティを扱う研究機関 例)暗号技術(AES),サイバーセキュリティ基準など |
| JISC | 日本工業標準調査会。日本の工業標準(JIS)の原案を審議・調査する政府系組織。ISO/IECへの日本代表窓口 |
| JIS | 日本産業規格。日本国内の工業製品・技術の公式な統一規格 例)ねじの規格,電気製品,安全基準など |
まとめ
今回は,法務について,知的財産権や著作権,不正アクセス禁止法,個人情報保護法,労働関連法規,契約形態,ソフトウェアライセンスなどをシンプルにまとめてみました。これらは試験でも頻出であり,特に「各権利の違い」や,「請負契約・派遣契約・準委任契約の違い」,「著作者人格権と著作財産権の違い」などは確実に押さえておきたいポイントです。単なる暗記ではなく,「どのような権利を保護するのか」,「誰が指示を出す契約なのか」,「どのような行為が法律違反となるのか」まで理解することが得点力につながります。
理解が進んだら,基本情報技術者試験やITパスポート試験の過去問題にもチャレンジしてみてください。

